「山が痩せると災害が広がる」―北九州北部豪雨災害の現場を訪ねてみた

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山が痩せると災害が広がるのはなぜ?

山が痩せる。

林業の世界に興味を持たないとピンとこない語感かもしれないが、現在の日本はさまざまな要因が絡み合って山が痩せ始めている。

いわゆる中山間地域における「高齢化問題」「一次産業の後継者不足」が浮き彫りになって、人間の営みとしての「山の管理」がぜんぜん追いついていないのが現状だ。

 

「山は自然だから、ほっといても大丈夫じゃない?」

 

2年前は私もそう思っていた。だって山だもの。各地で取材を続けていると、いかに高度経済成長の日本が林業に期待していたのかがわかってきた。40〜50年ぐらい前、国はやばい勢いで植林を推し進めた。

 

 

林業の世界は映画『WOOD JOB!』で描かれているように、自分の孫世代を想定して木を植える。苗から植えて、使える木に成長するまで50年以上かかる。社会変化の速度が上がり続けている中で、50年後の孫世代を見据えた事業こそ林業の本懐だ。

 

「やべ〜勢いで植えて林業で儲けようぜ!このままだと木が足りなくなるぜ!」

 

当時たった50年でこれまで経済が発展するとは思っていなかったのだろう。林業だけでなく、農業、漁業と生活を支える基盤はゆるやかに限界を迎えている。担い手が減り続けて、輸入木材に依存し、山と共に産業そのものが弱ってしまった。

さらに杉を植えすぎて「花粉症」という現代病まで置き土産に。花粉症当事者はたまったもんじゃないだろう。ただクシャミや鼻水だけでなく、冒頭の「山が痩せる」ことによって災害被害の拡大を招き始めている。

 

産業の衰退→担い手不足→山の管理が行き届かない→台風に弱くなるのサイクル

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人工林にしても、人間の意図によって植えられた木々は手入れが不可欠だ。適度に間引いて、日光が射し込む状態にしないと植物は育たない。林業の担い手が減り、手入れを怠ると木がやせ細る。

 

ここで不健康な生活を続けた40代のおじさんを想像してほしい。

 

細い髪の毛でスッカスカ。頭皮はカッチカチ。次世代の髪の毛が生えるまでもなく、ゆるやかに禿げていく…。山も同様に痩せて禿げる。幹が細い木は、根の張りも弱い。いつ抜けてもおかしくない状態だ。

そもそも山の生態系は、絶妙なバランスで成り立っている。雨水や雪解け水は一度山が受け止めて、時間をかけて川へ流れる。富士山の麓に流れている水は100年前だともいわれているほどだ。

この「山の保水力」が自然のバランスを支えているといっても過言ではない。山が痩せると保水力が失われる。保水力を失った土地は、台風や豪雨災害に滅法弱くなるのだ。

ちなみに「最近、山でシカが増えすぎている問題」の根っこにも、同じ課題感がある。シカは山の植物を食べつくす。大好きな新芽を食べて、落ちてる葉っぱも食べて、最終的には木の皮や根っこも食べる。結果、木々は荒れて、山の保水力が落ちるという。ある意味、林業視点とシカの大繁殖視点の2つで山が痩せ始めているのかもしれない。

 

九州北部豪雨災害の爪痕を目の当たりにして

2017年7月に起きた九州北部豪雨災害は、筑後川が氾濫して大きな被害を受けた。過去何度も氾濫してきた歴史がある。

 

平成29年7月九州北部豪雨とは、2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて、福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨。

異常気象(豪雨)の事象としては2017年6月30日から続く「梅雨前線に伴う大雨及び台風第3号による豪雨」の一部であり、また被害の規模は気象庁が自然事象について命名する基準を下回ってはいたものの、2017年7月19日付で九州北部の集中豪雨に関して独立した豪雨(被害)として命名された

※Wikipediaより引用

 

2017年10月末。現地を訪れてその光景を目の当たりにして、「山が痩せている」ことを実感した。地元の人は「天災ではあるが、人災ともいえる」と話す。

痩せた山は大雨によって土砂崩れを起こし、林業衰退の残骸ともいえる「放置した木材」が川へ流れ込んだ。氾濫した川のエネルギーと共に木材の重みが加わる。結果、被害は拡大した。

冒頭の写真は、2017年10月末時点のもの。被害の大きかったエリアは、今も復興工事が進められており、まだまだ時間がかかりそうな印象だった。東日本大震災、熊本地震も現地ではまだまだ復興作業が終わっていない。

にも関わらず、次から次に日本各地を災害が襲うため、人々の関心は恐ろしいスピードで移ろいでいく。大事な情報を発信すべきテレビ各局は、不倫、不倫、不倫、大相撲、不倫だ。

 

 

微力ながら過去にこんな記事を作っているが、小さなメディアのエネルギーには限りがある。まずは知ること。そしてダメ元でも伝え続けること。小さな声の総数が増えれば、何かきっかけが生まれるかもしれない。

そして年号が変わっても、元号が変わっても、世間の関心から置き去りにされた災害後の地域で暮らしている人たちがいる。

東京だっていつどんな災害に巻き込まれるかわからないんだから、他人事とは捉えずに関心を持ち続けられるようになりたいと思う。明日は我が身。利他は我が身を守る。

 

福岡大分ツアーの楽しい情報まとめ

深刻さばかり伝えてもアレなので、福岡大分ツアーのポジティブな情報もお届けします。出発は人気列車「ゆふいんの森」に乗車。ローカル線と車を使い分けて由布院→日田町→うきは市→東峰村→朝倉市とまわってきました。どこも魅力的な土地ばかりなので、改めてジモコロ取材ツアーを組もうと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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来年も現場に行き続けるぞ!

 

 

書いた人:徳谷 柿次郎

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株式会社Huuuu代表取締役。おじさん界代表。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学 / Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916