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【WEBメディア】ライター、編集、校正・校閲に求められる「美意識」の話

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【ライター交流会】文章の価値を高める「校正・校閲」作業とは? | Peatix

 

こんにちは、柿次郎(@kakijiro)です。

先日、こんなイベントに参加してきました。WEB媒体のライター・編集者をしていると、なかなか接点が生まれない「校正・校閲」の世界。その理由はWEB媒体の予算の無さ(=体力の無さ)に起因してると僕は思っているんですが、そもそもの理解すら足りないのかもしれません。

 


校正・校閲についてエンタメ要素たっぷりに話してくれたのは、神楽坂にある『鴎来堂』『かもめブックス』の柳下恭平さん。詳しいところはジモコロの記事でも読んでみてください。

一緒に朝まで飲んだり、裸の付き合いをしたり、酔っ払った勢いで自宅に招いたり…とてもお世話になっているお兄さん的な方です。懐に飛び込んでも優しく受け止めてくれる。そこに遠慮なく甘える。こういった距離感で付き合ってもらえている数少ない先輩でもあります。

 

クオリティを上げるために必要な「美意識」

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さて、柳下さんのプロ論的な話は取材含めた日頃のお付き合いでいつも聞かせてもらっているんですが、今回「参加者」という目線でトークを聞いてみて、やけに深く刺さった言葉があります。

 

「美意識」

 

校正・校閲の世界は「作品をおもしろいと感じたら失格」「虫の眼と鳥の眼を使い分けて、客観的に文章をチェックする」といった感じで、ライター編集者とは全然違った視点で文章に向き合っています。同時に正解のない領域でもあり、筆者や読者、時代性の価値観に「慮り続ける」必要がある。その基準を作るのが「美意識」なのかなと、柳下さんの話を聞いていて感じました。言い換えればプロのこだわりでしょうか。

 

「WEB」と「紙」の議論を起こす根本には…

この美意識の物差しを持ってみたら、兼ねてから議論されている「WEBと紙の対立構造」も腑に落ちる気がします。まず僕自身も属しているWEB媒体。職人性のあるライター・編集者の母数が圧倒的に少なく、限られた予算の中でアマチュアが多く参入している土壌です。また、広報・PRやSEOマーケティングの主語が入り混じって、ある意味カオス的な様相を呈しています。まぁ、発展途上な土壌なので仕方がないんですけどね。

この世界に足りないのは、前述の美意識を持った師匠、先輩の存在です。

やっていいこと、わるいこと。子どもでさえしっかり倫理観を教えないと分からない。ある意味、WEB媒体の節操の無さはここに起因してる気がしてなりません。「なにこの記事? ネットの情報かき集めただけじゃねーか」「この部分、ちゃんとウラ取ったのか?」「ここの文章はリズムが悪い。言い回しも平凡で最悪。やり直せ!」といった厳しい意見は、師匠、先輩の美意識の物差しあってこそ。こういう妥協なき世界の中でどこまで踏ん張れるのか。我慢強さ。粘り強さ。職人性を問われる業種だからこそ、美意識の基準が不可欠なのではないでしょうか。

故に紙媒体の美意識からしたら、WEB媒体の低い美意識に苛立ちを覚える。後から「修正できない/修正できる」の特性の違いが、美意識の必然性を大きく分けたのではないか? こんな仮説も考えられます。

 

美意識が生まれる環境に身を置いた経験

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出版社や編集プロダクションは、美意識を伝えるために適した組織といえます。「俺の背中を見て勝手に覚えろ」「何かあったらケツを拭くから思い切ってチャレンジしろ」「いざとなったら喧嘩してOK!」みたいな台詞…新人や後輩なら一度は言われたいもんですよね。僕の肌感では、出版社や編プロにはこの空気感が残っているところが多いと思います。

今回のイベント主催である有限会社ノオト代表の宮脇さん。僕の前職の師匠です。ウンコのカスみたいな未熟者のときに教えてもらったのは、美意識に基づいた考え方と技術だったように思います。当時は期待に応えようと必死でしたが、ここ最近宮脇さんに教えてもらった価値観が土台になっているなと感じるばかりで。それこそ「喧嘩してOK」な姿勢は、宮脇さんが身を持って示してくれていました。

ある打ち合わせの帰り道に「ふざけんなよ!」って言いながらカチカチのコンクリートに蹴りを入れてた姿…おっかなかったなぁ…。足痛そうだし。新人時代のクレーム対応も仕事しながらこっそり聞いていて、返答に筋が通ってなかったら「おい!そこで折れるな!電話代われ!」と怒鳴られたこともありました。今では僕が後輩やインターンに同じようなことをしています。電話の内容って雰囲気で分かるもんですね。

 

美意識はどう育むべきなのか?

WEB上に記事が増え続ける中でどう美意識を育むべきなのか? オウンドメディアブームもやや落ち着きつつありますが、「取材なし!画像引用ばかり!これがキュレーションメディアや!」の風潮は止められないでしょう。クラウドソーシングの台頭も同様です。なんたって便利で効率が良い。その結果、ライター編集者の参入障壁が年々低くなっています。教育できる世代がごそっと抜けているため、内製でイチから育てるのは一般的ではないかもしれません。考えられるのは…

  • ライター、編集、校正・校閲の美意識を企業側に根づかせる
  • WEBメディアの予算をしっかり作れる編集者を増やす
  • 美意識を持った編集者、校正・校閲者をパートナーに迎え入れる
  • WEBと紙の境界線を薄くして、美意識の交流を活発にする
  • Googleがクオリティの低いメディアを淘汰する

このあたりなのかなぁと。もちろん僕自身もまだまだ確固たる美意識を持てているとはいえず、今回の気づきを生かしてより精進しなければいけません。数年単位で解決できる問題ではないと思いますが、30〜40代でWEB/紙媒体をクロスオーバー的に活躍している世代が当事者問題として取り組むべき課題ではないでしょうか。

そうしないと「ライター編集者、50代になったら食えない問題」が周回遅れの疫病みたいに降りかかってきそうで怖いです!  みんなでなんとかしよう!

 

【お知らせ】

突然ですが、ジモコロがフェスデビューします。京都の老舗フェス「ボロフェスタ」のプレイベント「ナノボロフェスタ」。8月28日(日)15時15分〜@京都です。フックアップブラザーズとしてブロガー・望月優大さんと一緒に話します。暇な人ぜひ!

[プレイベント]ナノボロフェスタ
日時 : 2016年8月27日 (土)、28日(日)
OPEN 12:00 / START 12:30
場所 : Livehouse nano & Football Bar ラクボウズ & 喫茶マドラグ [MAP]
チケット:
[前売り]一日券 2000円 / 二日通し券 3600円(共にドリンク代なし)
[当日]一日券 2500円(ドリンクなし)

ナノボロフェスタ | [ボロフェスタ2016 公式ウェブ | BOROFESTA2016 Official Web]

 

書いた人:徳谷 柿次郎

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ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter@kakijiro / Facebookkakijiro916